なぜ結婚式で自由に音楽が使えない?『著作権のポイントを解説』
「著作権が厳しくなって結婚式で自由に音楽が使えないって本当?」


「複雑で良く分からない。結局、なにがOKでなにがダメなの?」

本記事ではこのような疑問に答えます。

どうもこんばんわ。ネロです。

 

先日、知人の結婚式でお祝いムービーを作る機会がありました。

ムービーを盛り上げるにはBGMが欠かせませんよね。

当然ぼくも購入した音楽データをコピーしムービーBGMに設定するつもりでいたのです。

 

ところが式場プランナーから、

「ムービーにBGMは付けずに、市販CD原本を用意してください。」

とのお達しが。

 

過去に結婚式プロフィールムービーを作成した際には、音楽データをコピーしてムービーBGMに設定しても何も問題なく式場で流せました。

「以前は出来たのになぜ??」疑問に思っていろいろ調べてみると、なんと結婚式での音楽利用に関する著作権ルールが厳しくなっていたのです。

商用利用での楽曲利用がとても厳格に管理されるようになりました。

 

本記事では実際にぼくが結婚式ムービーを作成する作成する過程で調査・経験した結婚式での音楽著作権ルールを紹介します。

ただ著作権ってとても複雑で難解。

そのため、”ここを押さえておけばOK”というポイントに絞ってシンプルに解説します。

 

式場から「このムービーは流せません。」と拒否されないよう本記事を参考にしてくださいね。

それではご覧ください。

 

著作権が厳しくなったのは2017年から

結婚式音楽利用の著作権


「昔は結婚式のプロフィールムービーにBGMを加えても大丈夫だったよ。」

そう思われている方も多いでしょう。

 

結婚式場での楽曲使用に関して議論され始めたのは2012年ごろからのようです。

音楽業界からブライダル業界へ適切な許諾料の支払いを求める動きが進んできました。

特に社会的に問題が認識されるキッカケになったのが、2017年に日本音楽著作権協会(JASRAC)がブライダル映像コンテンツ制作会社に対して適正な許諾料が未払いだと起こした訴訟です。

これまでJASRACが許諾料未払いで訴訟を起こすのは初めての事態で、ブライダル業界と著作権の問題が世間に広く知れ渡りました。

 

 

音楽著作権管理の基本

結婚式音楽利用の著作権 (3)


法律用語は日常聞きなれない言葉も多く我々一般人には取っ付きにくいものです。

でも最低限の言葉を知っておかなければ著作権を理解出来ません。

まずは音楽著作権の基本的な原理から見ていきましょう。

 

音楽著作権は主に2種類

通常ひとくくりにされる著作権ですが、大きく

  • 著作権
  • 著作隣接権

の2種類が存在します。

それぞれの違いは”何に対する権利で”、”誰が持っている権利なのか?”という点。

 

  • 著作権

著作権は楽曲自体に対する権利。

著作権を持つ著作権者は楽曲を作成した作詞者、作曲者です。

 

  • 著作隣接権

著作隣接権は録音された音に対する権利。

著作隣接権を持つ著作権者は曲を演奏するアーティストや、曲を録音したレコード会社です。

 

 

音楽著作権は管理事業者が管理する

楽曲には著作権が発生するため曲の利用者は著作権者に対して許諾料を支払わなくてはいけません。

でも曲を利用するごとに作詞作曲者やレコード会社に申請していては、いちいち申請を受ける作詞作曲者やレコード会社が大変です。

そこで著作権を管理する事業者が申請を仲介する仕組みになっています。

結婚式音楽利用の著作権 (7)

 

 

結婚式場で音楽を流すには演奏利用と複製利用がある

結婚式音楽利用の著作権 (5)

著作権の種類以外にもう一つ知っておくべき内容があります。

結婚式場で音楽を使う方法によって、

  • 演奏利用
  • 複製利用

という行為に分けられます。

それぞれどのような利用方法が該当するのでしょうか。

 

演奏利用とは

市販されているCDをBGMとして流す場合は「演奏利用」。

楽曲自体は市販されているCDを使うため、単純に”演奏する権利”のみ必要になります。

また結婚式の余興でアーティストの曲をバンド演奏する場合も演奏利用に該当します。

 

複製利用

「複製利用」になる利用方法はいくつか考えられます。

・市販CDから好きな曲をコピーしてオリジナルCDを作る

・ダウンロード購入した音楽データをCDに焼く

・自作ムービーのBGMに音楽データを設定し1枚のDVDを作成する

・BGMが流れている結婚式を録画したDVDを配る

つまり音楽データを複製する行為は全てあてはまると考えてください。

 

演奏利用とは違い複製利用では”音楽データを複製する権利”が必要になります。

音楽データを複製しても私的利用の範囲なら問題ありません。

でも結婚式で利用すると話は別。著作権法違反になります。

式場プランナーから「ムービーにBGMは付けずに、市販CD原本を用意してください。」と言われたのは複製利用

 

結婚式のBGMは私的利用ではないのか?

結婚式音楽利用の著作権 (6)


演奏権や複製権が必要とは言え、

「そもそも結婚式は私的に挙げるものだから私的利用じゃないの?」

と疑問に思いますよね。

 

実は結婚式での音楽利用は商用利用になるため注意してください。

私的利用とは個人や家族で楽しむ範囲での利用。

一方で結婚式で音楽を流す場合、次の理由から私的利用には当てはまりません。

 ・個人や家族の範囲を超えた大人数の場で流されること

 ・式の演出として利用されること

式の演出で利用 = 式のサービスの一環、となり営利目的と判断されます。

営利目的で利用する以上、私的利用の範囲を超えているという訳ですね。

 

 

 

演奏利用での音楽利用

演奏利用、複製利用の違いで著作権の申請や式場で利用可否が違います。

まずは演奏利用の場合に式場で利用する方法を紹介します。

 

演奏利用=『著作権』

市販されているCDをBGMとして流す演奏利用は著作権に当たります。

著作権を持つ著作権者は楽曲を作成した作詞者、作曲者。

演奏利用として音楽を利用するには作詞者、作曲者に利用許諾の許諾を得なければいけません。

 

著作権はJASRACが管理している

著作権を管理している団体はJASRAC(日本音楽著作権協会)。

JASRACが利用者と作詞者、作曲者を仲介し利用許諾を取得してくれます。

 

結婚式場で利用できるのか?

演奏利用の場合は曲利用時にJASRACへ利用申請し許諾を得れば結婚式場で利用できます。。

ただし式場のように利用頻度が高いと何度も申請するのが大変。

そこで大体の式場では、いつどんな曲を流しても大丈夫なようにJASRACと包括契約を結んでいます。

結婚式場が包括契約を結んでいればいちいち曲利用ごとに申請する必要はありません。

ぼくの場合も「~の曲を使用したい」と式場に申し出て即OKが出たため、JASRACと包括契約を結んでいるのでしょう。

 

 

複製利用での音楽利用

演奏利用に比べて複製利用は複雑です。

結婚式場で複製利用をする場合の違いを見ていきましょう。

 

複製利用=『著作権+著作隣接権』

音楽データを複製する複製利用は著作権に加えて著作隣接権も関わってきます。

著作権を持つ著作権者は楽曲を演奏するアーティストや録音したレコード会社など。

 

著作権と著作隣接権は管理する団体が別

JASRACが管理するのは著作権のみで著作隣接権は管理対象外。

そのため著作権と著作隣接権をJASRACに一括で申請してもらうことはできません。

著作隣接権はレコード会社などから許諾を得ることなります。

 

式場での利用はできるのか?

結婚式場で音楽を複製利用するには著作権、著作隣接権それぞれの許諾を得なければいけません。

 

  • 著作権

演奏利用の場合は結婚式場がJASRACと包括契約を結んでいれば利用個別に申請する必要はありませんでした。

しかし複製利用はJASRACの包括契約には含まれません。

そのため音楽利用するたびにJASRACへ申請が必要です。

 

  • 著作隣接権

著作隣接権もJASRAC管理外のため直接レコード会社等への申請が必要です。

 

複製利用の申請はISAMが代行してくれる

音楽を複製利用するために新郎新婦が個人でJASRACやレコード会社に申請する必要はありません。

1個人がJASRACやレコード会社へ直接申請するのはとても大変です。

そこでISAMという団体が音楽の利用申請を代行してくれます。

 

ISAM(一般社団法人音楽特定利用促進機構)は2013年に設立されたブライダル事業者向けの許諾代行機関。

 

でも個人ではISAMを利用できません。

音楽を複製利用した場合は結婚式場やムービー作成業者に依頼することになります。

 

 

まとめ:音楽の複製利用は個人では厳しい

今回結婚式ムービーを作成するにあたり著作権関連の詳細を調べた結果感じたのは、

「結婚式ムービーにBGMを付けるのは難しい」

ということ。

 

確かに結婚式場経由でISAMへ利用申請すれば複製利用できることは分かりました。

ただし申請にも当然料金が掛かってくる上、許可が下りるかは分かりません。

その上、仮に許可されても結果が分かるまでに月単位の日数が掛かるそうです。

時間を惜しんで計画的に準備を進めなくてはいけない新郎新婦にとって、とても現実的ではありません。

 

音楽業界に正当な報酬が回るよう著作権は必要なものです。

きちんとルールに従い出来る範囲で最高の結婚式ムービーを作り上げましょう。

それでは。